NOROIの福袋

中度ASDの日常

10年 捨て猫と外国人

 今日、こんな出来事があった。

 買い物帰り、重い荷物を持って集合団地の区画を歩いていると、急に外国人に声を話しかけられた。

 普通の体臭とかではない、臭いが鼻に付いた。そんなにすごい臭いではないけど。アジア系の顔だった。40代くらいの女性。

 彼女は英語で、近くの草むらの中の猫を指さし、必死に「これは○○だ」とくりかえす。

 話を聴くと、彼女はその捨て猫が心配だということだった。会話ほぼ英語。なぜかと聞くと、それはイタリアの猫種で、ペット用の動物?なので、野生では生きられないから保護が必要だし、その猫がいた敷地の保育園の子供が猫をたたくに違いない、ということ。

 それで彼女は私に「しかるべきところに電話してほしい、自分は日本語ができないから。私があなたに声をかけたのはそのためです」と言った。最後の方に。

 その間に、彼女は自分の身の上や、団地の人々や彼女の娘の小学校の日本人がどれだけ酷いか、自分がどれほど日本で冷遇されてきたか、とかをすごい勢いで語った。

 今まで私の話を聴いてくれた人は一人もいない、日本人は無視する、外国人は国に帰れと言われる、日本人は金持ちで幸せなのに何故猫を飼って捨てるの?あなたは学校に行けたから英語が喋れるんでしょ、とか、自分はこの冷酷な人々が住む団地を出て東京に行きたいけど子供がいるから行けない、と何度も言った。

 

 私は「日本人は金持ちで幸せなのに何故猫を飼って捨てるの?」と言われて「私は日本人だけど猫を捨てた人間の気持ちは知らない」とハッキリ言った。それでおばさんの顔がちょっと神妙になった。彼女もそれはわかっているという顔だった。ただもう限界まで追い詰められていて、誰かと話したいだけなのかもしれない。

 「この猫は金持ちに捨てられた。ほっといたら死んじゃう。猫は悲しい。私も悲しい・・・(身の上話)」という話が止める間もなくえんえんと続いた。

 

 私は「何故あなたはその猫種までわかるのか、動物だから屋外で生きられないなんてありえない」というと、「スマホで調べた。シャワーをしてあげないと死んじゃう」と言われ、堂々巡りの会話に。

 もしかしたら、猫の話は嘘かもしれない。ただ誰かに助けを求めたかっただけかも。

 彼女はこの団地に10年住んでいると話した。

 私は市に電話するか、野良猫の取り組みに詳しい隣人に相談すると約束して別れた。

 

 ◆

 

 

 自分の家に戻っても、しばらくもやもやした不快な気持ちが晴れなかった。

 私はあの外国人のおばさんの立場に数年前までいた。もちろんあんな風に露骨な言動はしてないけど、考えていることはほとんど変わらない。日本人がこころの底から大嫌い。自分はどんなに努力してもスタートが違うしやってられない。でも、私は今数年前までとは違う立場にいる。

 もし今準備していることがうまく行って専門分野で働けるようになれば、私はホワイトカラーになることになるのかも。もしそうなったとしたら、それは日本という国が裕福だから教育を受けられ、福祉も受けられたからに他ならない。発展途上国なら無理だったはず。

 そんなこと考えても仕方ないけど、考えずにいられない。

 

 外国人支援の活動とかも時々してるけど、日本が裕福になったのは昔の日本人が必死で働いたからで、外国人より日本人を守らないのは不自然かもしれない。

 日本人という民族が生き残るために必死で近代化して、裕福な国になったらしい。その結果「日本人は金持ちのくせに」と言われるのはどうなんだろう。

 そもそも日本という国を子供の時から憎んでいなかったら、こんなに悩まなかったはず。

 まとまってないけど、おわり。